KAIKEI SHOUKEI ANALYSIS #001

会計事務所の事業承継問題
──業界データで見る全体像

税理士の高齢化、税理士法人化の急進展、そして大手による業界集約。会計事務所業界は、過去に例のない規模の世代交代と構造再編期に突入している。日税連・経済センサス・日本M&Aセンター等の業界レポートのみを使い、業界の現在地をデータで可視化する。

CATEGORY
業界マクロ
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2026.05
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3〜4分
DATA POLICY
業界データのみ
会計事務所承継サポート EDITORIAL TEAM
編集部/会計事務所M&A・事業承継の専門メディア
A
81,696
登録税理士数(2024年度末)
A
8,269事務所
税理士法人 拠点合計(主たる+従たる事務所/2025年10月末)
A
53.6%
60代以上の税理士比率(第7回実態調査)
B
84拠点
業界最大手・辻・本郷税理士法人 拠点数(2025年10月)
01
INDUSTRY SCALE税理士業界の規模
そもそも会計事務所業界はどれくらいの規模で、どう動いているのか?
登録税理士数の推移(2010-2024)
単位:人/年度末/20年で約1.13倍にとどまる
A出典: 日本税理士会連合会「税理士登録者数」各年度末
税理士法人 主たる事務所数の長期推移
単位:法人(主たる事務所のみ)/約20年で約5倍に急増
A出典: 日本税理士会連合会「税理士法人 届出数」公式統計
税理士事務所の規模別構成(経済センサス)
単位:%/従業員規模別の事業所構成
A出典: 総務省統計局「経済センサス‐活動調査(令和3年)」産業細分類「公認会計士事務所、税理士事務所」
KEY FINDING
税理士は微増、税理士法人は20年で約8倍
登録税理士数は緩やかな微増(過去20年で約1.13倍)にとどまる一方、税理士法人の届出数は2005年→2025年で約8倍に急増。会計事務所業界では「個人事務所」から「税理士法人」への構造シフトが急速に進んでいる。事業所の約75%が職員5人未満という小規模構造そのものは業界基盤として残る一方、上層では法人化が進む二極化構造である。
02
AGE STRUCTURE税理士の年齢構造
所長税理士は何歳で、いつ引退するのか?
税理士の年代別構成比(第7回税理士実態調査・2024)
単位:%/60代以上が53.6%、70代以上だけで22.0%
A出典: 日本税理士会連合会「第7回税理士実態調査(2024)」年代別構成
若手世代(20-30代)比率の推移(実態調査3回比較)
単位:%/約10年で半減
A出典: 日本税理士会連合会 第5〜7回税理士実態調査
60代以上比率の推移(実態調査3回比較)
単位:%/第5回(2014)→第7回(2024)で約10pt上昇
A出典: 日本税理士会連合会 第5〜7回税理士実態調査
WARNING
60代以上が過半数、若手はほぼ半減
税理士の60代以上比率は53.6%。70代以上だけで22.0%を占める。一方、20-30代の若手世代は11.5%→6.6%へと約10年でほぼ半減した。世代交代圧力は業界全体の構造として既に確定している。
03
LEGAL ENTITY SHIFT税理士法人化の進展
個人事務所と税理士法人、業界の主役はどう動いているのか?
税理士法人 主たる事務所数の長期推移(2005-2023)
単位:法人(主たる事務所のみ)/約20年で約5倍に急増
A出典: 日本税理士会連合会「税理士法人 届出数」公式統計
主たる事務所 vs 従たる事務所 の構成(2025)
単位:%/「主たる」は法人本体、「従たる」は支店展開
A出典: 日本税理士会連合会「税理士法人 届出数(2025年10月末)」
税理士法人 所属税理士比率の推計推移
単位:%/実態調査ベースの所属区分推計
A出典: 日本税理士会連合会 第5〜7回税理士実態調査
KEY FINDING
多拠点化で「個人依存」から「組織依存」へ
税理士法人 届出数は約20年で1,000法人 → 8,269事務所へ。とくに2010年代後半から従たる事務所(支店展開)の伸びが顕著で、多拠点化(業界の集約・大型化)が進行。代表所長個人の引退が事務所消滅に直結しない法人形態が、業界の選択肢として定着しつつある。
04
OFFICE TRENDS会計事務所の退出動向
税理士事務所数は実際に増えているのか、減っているのか?
税理士事務所数の推移(経済センサスベース)
単位:事業所/2000年代半ばをピークに減少基調
A出典: 総務省統計局「経済センサス‐活動調査」「経済センサス‐基礎調査」産業細分類
個人事務所と税理士法人 事業所数 比較(推移)
単位:事業所/個人は減少、法人は急増
A出典: 総務省統計局「経済センサス」/日税連「税理士法人 届出数」
税理士登録抹消件数の参考推移(廃業含む)
単位:件/日税連月報「会員異動」統計の年次集計
A出典: 日本税理士会連合会 月報「会員異動」統計(年次集計)
KEY FINDING
「静かな業界再編」が長期にわたって進行
税理士事務所数は2000年代半ばをピークに減少基調。一方で税理士法人は前章のとおり急増しており、個人事務所が法人へと集約・吸収されている構造が事業所数の動きから読み取れる。年間の登録抹消(廃業含む)も継続的に発生しており、表に出ない業界再編が長期にわたって進行している。
05
REORGANIZATION会計事務所業界の再編・集約動向
会計事務所同士の統合・集約は、どこまで進んでいるのか?
辻・本郷税理士法人 拠点数の推移(業界最大の集約成長事例)
単位:拠点/2002年スタートから事業承継M&Aで全国84拠点へ(2025年10月時点)
B出典: 辻・本郷税理士法人 公式法人案内・国内拠点ページ(2025年10月)/月刊実務経営ニュース
大手税理士法人TOP10 拠点数比較(2024-2025)
単位:拠点/辻・本郷84が独走、2位以下は20拠点以下
B出典: 東洋経済オンライン「職員と拠点で見る税理士法人ランキング」/会計事務所名鑑 2024年版
業界TOP10税理士法人と業界平均の従業員数 比較(2024-2025)
単位:人(対数スケール)/業界平均約4名 vs TOP10は168〜2,297名と数百倍の規模差
B出典: 各法人公式法人案内・採用ページ/freeconsul「税理士法人ランキング」/HUPRO MAGAZINE(Big4規模感)/業界平均は総務省経済センサス2021従業員規模別構成の加重平均
CONSOLIDATION
TOP10は168〜2,297名、業界平均は約4名──数百倍の規模差
会計事務所業界の再編は、大手による地域事務所の集約という形で確実に進んでいる。業界最大手の辻・本郷税理士法人は2002年スタートから2025年に全国84拠点・従業員2,297名へと拡大した。TOP10すべてが従業員168名以上を抱える一方、業界平均は1事務所あたり約4名(経済センサス2021ベースの加重平均)にすぎず、税理士200名超を抱える事務所は全国でわずか6事務所、100名以上でも8事務所のみ。上層では大手数社に集中し、下層では1人事務所が大半を占める「業界の極端な二極化」が進行している。
06
SUCCESSION PATTERNS会計事務所固有の承継パターン
会計事務所の承継は、ほかの中小企業とどう違うのか?
中小企業全体 vs 会計事務所 承継パターン比較
単位:%/会計事務所は資格制約のため親族承継が困難
A+B出典: 帝国データバンク「全国企業後継者不在率動向調査(2024)」就任経緯別/税理士法(資格者要件)
中小企業全体の承継3類型 推移(脱ファミリー化の進行)
単位:%/2024年に内部昇格36.4%が同族承継32.2%を初めて上回った
B出典: 帝国データバンク「全国企業 後継者不在率動向調査」就任経緯別 経年推移
税理士業界の承継4類型(業界の実務分類)
単位:—/資格制約・選択肢の現実性
B出典: 日本M&Aセンター・船井総研グループ・みつきコンサルティング 業界コラム複数
KEY FINDING
資格制約があるからこそ「第三者M&A」と「大手統合」が現実解
税理士業は有資格者要件があるため親族承継が構造的に難しい(根拠:税理士法)。中小企業全体では2024年に内部昇格36.4%が同族承継32.2%を上回る脱ファミリー化が進むなか、会計事務所では「職員独立支援」「大手税理士法人への統合」「第三者M&A」が現実的な選択肢になる。辻・本郷税理士法人のように全国84拠点まで拡大する大手の存在が、業界集約の受け皿として機能している。
07
VALUATION会計事務所M&A 譲渡価格相場
実際にいくらで売買されているのか?
会計事務所M&A 売上倍率の業界相場(複数出典の中央値レンジ)
単位:倍/業界の定説:年商の0.8〜0.9倍が中心、0.7〜1.0倍まで広がる
B出典: ZEIKEN/日本M&Aセンター/船井総研グループ/みつきコンサルティング 業界コラム複数
営業利益倍率レンジ(Years × EBITDA)
単位:年分/3〜6年分が近年の中心レンジ
B出典: ZEIKEN「税理士事務所M&Aの譲渡対価の相場」/船井総研/業界仲介社解説
譲渡額の典型レンジ
単位:%/案件分布(業界一般)
B出典: ZEIKEN「税理士事務所M&Aの譲渡対価の相場」/業界仲介社解説
KEY FINDING
業界の定説:年商の0.8-0.9倍/営業利益の3-6年分
会計事務所M&Aの譲渡価格は、売上倍率0.8〜0.9倍/営業利益の3〜6年分がZEIKEN・日本M&Aセンター・船井総研など複数の業界専門ソースで一致した中心レンジ。譲渡額レンジは1,000万円〜1億円が典型で、価格を決める変数は顧問先継続率・所長残留期間・職員定着率・地域・業種偏在度。引退の数年前から「引き継げる事務所」へ磨き込めるかどうかで、価格は数百万〜数千万円単位で動く。
08
OUTLOOK業界構造の方向性
このまま推移すれば、向こう10年で業界はどうなるのか?
税理士法人 届出数の長期推移+直線外挿
単位:事務所/2030年に約12,000事務所到達想定(読者再現可能)
A出典: 日本税理士会連合会「税理士法人 届出数」+単純線形外挿
税理士の年齢構成 5年・10年スライド
単位:%/※新規登録・登録抹消は考慮しない単純加算
A出典: 日本税理士会連合会「第7回税理士実態調査(2024)」+単純年齢加算
大手税理士法人TOP5 拠点合計の推移+外挿
単位:拠点/業界の集約・大手化の量的指標
B出典: 東洋経済オンライン「職員と拠点で見る税理士法人ランキング」/会計事務所名鑑+直線外挿
DEMOGRAPHIC PRESSURE
10年で70代到達は約7割、業界の集約はさらに加速
日税連の現在の年代別構成をそのまま10年スライドさせるだけでも、今後10年以内に70代に到達する層(現在55歳以上)が業界全体の約7割を占める。同時に税理士法人 拠点合計は線形外挿で2030年に約12,000事務所へ、大手TOP5の拠点合計は2030年に約220拠点へと、個人事務所の退出と大手法人への集約がさらに加速する見込み。「いま動く」と「あと5年待つ」では、買い手の選択肢の数が大きく変わる。

結論:「53.6%・8,269事務所・1万件」が示す会計事務所業界の構造的転換点

会計事務所業界は、いま静かに大きな転換点を迎えている。日本税理士会連合会の登録税理士数は81,696人を維持しているものの、第7回税理士実態調査(2024年)によれば60代以上の税理士が全体の53.6%を占め、70代以上だけで22.0%を超える。一方、20-30代の若手世代は10年でほぼ半減し、6.6%にまで減少した。業界の基盤を担ってきた世代が、まとめて引退適齢期に入っている。そして、この世代交代圧力に対する業界の答えとして、税理士法人の届出数は2005年の1,000法人から2025年の8,269事務所(拠点合計)へと、20年で約8倍に急増している。

税理士業は有資格者要件がある専門業のため、他の中小企業のように「親族の誰かに継がせる」という選択肢が構造的に取りづらい。実際、中小企業全体では2024年に内部昇格36.4%が同族承継32.2%を上回る脱ファミリー化が進んだが(帝国データバンク)、税理士業界ではこの動きはより極端なかたちで現れる。経済センサスベースで見れば税理士事務所の事業所数は2000年代半ばをピークに減少基調に入っており、毎年継続的に登録抹消(廃業を含む)が発生している。失われているのは事務所だけではない。長年蓄積された顧問先との信頼関係、職員の雇用、地域の中小企業を支えてきた相談窓口──そのすべてである。

他方で、会計事務所業界の再編は、大手による地域事務所の集約という形で確実に進んでいる。業界最大手の辻・本郷税理士法人は2002年スタートから2025年に全国84拠点・従業員2,297名へと拡大した。後継者不在に悩む地方事務所をM&Aでグループに加える成長モデルが、業界の集約を牽引している。TOP10税理士法人はすべて従業員168名以上を抱える一方、業界平均は1事務所あたり約4名(経済センサス2021ベースの加重平均)に過ぎず、税理士200名超を抱える事務所は全国でわずか6事務所、100名以上でも8事務所のみ。上層では大手数社に集中し、下層では1人事務所が大半を占める「業界の極端な二極化」が進行している。譲渡価格相場も業界の定説として固まりつつあり、ZEIKEN・日本M&Aセンター・船井総研など複数の業界専門ソースが一致して示すレンジは、売上倍率0.8〜0.9倍/営業利益の3〜6年分/譲渡額1,000万円〜1億円。価格を決める変数は顧問先継続率・所長残留期間・職員定着率・地域・業種偏在度──これらは数年前から「引き継げる事務所」へ磨き込める定量指標であり、準備した事務所と準備しなかった事務所では譲渡価格が数百万〜数千万円単位で違ってくる。

日税連が公表する現在の年代別構成をそのまま機械的に10年スライドさせるだけでも、向こう10年以内に70代に到達する層(現在55歳以上)が業界全体の約7割を占める。税理士法人の届出数も線形外挿で2030年に約12,000事務所に達する見込みで、個人事務所の退出と大手法人への集約はさらに加速する方向にある。本記事はあくまで業界の全体像を業界データで俯瞰したものだが、ここから先の問いは個別である。あなたの事務所は、業界平均と比べてどこに位置しているのか。顧問先構成、職員年齢、デジタル化対応、税理士法人化への対応──ひとつずつ数字で見ていくと、自分の事務所が「準備された側」なのか、「これから準備する側」なのかが見えてくる。

REFERENCES

出典・参考文献

本記事に掲載したすべての数値・グラフは、(A) 公的統計(日税連/総務省統計局/中小企業庁等)(B) 上場M&A仲介社IR・業界専門メディア(日本M&Aセンター/ZEIKEN/船井総研グループ等)のみを根拠としている。**会計事務所固有データを最優先**し、全国中小企業データは比較・対比の補助としてのみ使用。
A
公的統計・公表資料
  • 日本税理士会連合会「税理士登録者数/税理士法人 届出数」 公式ページ ── c01a, c01b, c03a, c03b, c08a, KPIバンド①②で参照
  • 日本税理士会連合会「第5〜7回税理士実態調査」 第7回報告書 ── c02a, c02b, c02c, c03c, c08b, KPIバンド③で参照(年代別・所属区分)
  • 総務省統計局「経済センサス‐活動調査(令和3年)」「経済センサス‐基礎調査」 調査結果ページe-Stat 産業細分類別データ ── c01c, c04a, c04b で参照
  • 日本税理士会連合会 月報「会員異動」統計 日税連が定期公表する登録抹消・新規登録の月次集計 ── c04c で参照
  • 税理士法(資格者要件) 税理士業の親族承継における資格制約の根拠規定 ── s06 概念整理で参照
B
業界調査・公開IR・業界専門メディア
  • 辻・本郷税理士法人 公式法人案内・国内拠点ページ 国内拠点法人案内 ── c05a, c08c, KPIバンド④で参照(拠点数推移・全国84拠点)
  • 月刊実務経営ニュース「辻・本郷税理士法人が推進する5年後に向けた成長戦略」 記事 ── c05a で参照(M&Aグロース戦略・過去拠点数の業界事例)
  • 東洋経済オンライン「初公開!職員と拠点で見る税理士法人ランキング」 記事 ── c05b, c08c で参照(大手税理士法人TOP10 拠点数・職員数)
  • 会計事務所名鑑「税理士が多い会計事務所ランキングTOP30(2024年11月版)」 記事 ── c05c で参照(税理士200名超は全国6事務所のみ/100名以上8事務所)
  • 税務研究会 ZEIKEN「税理士事務所M&Aの譲渡対価の相場(会計事務所M&Aの疑問シリーズ)」 記事ページ解説ページ ── c07a, c07b, c07c で参照(売上倍率0.8-0.9倍/営業利益3-6年)
  • 船井総研グループ M&A・事業承継コンサル「士業M&A 税理士事務所・会計事務所M&A 2024年動向レポート」 記事 ── c06c, c07a で参照
  • 辻・本郷税理士法人 公式法人案内 法人案内 ── c06b で参照(全国84拠点・顧問先2万件超の業界事例)
  • 帝国データバンク「全国企業 後継者不在率 動向調査(2024)」 調査結果ページ ── c06a で参照(中小企業全体との対比のみ)
本記事では (C) 自社調査・自社推計を使用していません。
すべてのチャートは公的統計(日税連/経済センサス等)と上場M&A仲介社のIR資料・業界専門メディア(ZEIKEN・船井総研等)のみを根拠としています。読者が出典URLから同じ数字に到達できることを編集方針としています。
最終確認日:2026年5月 | 次回改訂予定:2026年10月(以後、半年ごとに4月/10月改訂)