KAIKEI SHOUKEI ANALYSIS #005

会計事務所M&A成約件数の推移
──市場形成期の今を読む

中小企業全体のM&A成約は2014年から10年で約4倍に拡大した。会計事務所M&Aもこの波の中で確実に件数を増やし、上場仲介社・支援機関を巻き込んだ「市場形成期」に入っている。中小企業庁・支援機関・上場仲介社IRの公表データだけで、現在地と方向性を可視化する。

CATEGORY
M&A市場
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2026.05
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3〜4分
DATA POLICY
公的統計+業界IR
会計事務所承継サポート EDITORIAL TEAM
編集部/会計事務所M&A・事業承継の専門メディア
A
約4,000
中小M&A成約件数(2023年度・中小企業庁集計)
A+B
約4
10年でのM&A成約件数の拡大幅(2014→2024)
A
約3,500機関
M&A支援機関 登録数(2024)
B
約500-700件
会計事務所M&Aの年間成約推計(業界主要仲介社+独立案件)
01
DEAL VOLUME中小M&A 成約件数の推移
日本のM&A市場全体で、成約件数はこの10年でどう動いたか?
中小M&A 成約件数の推移(2014-2024)
単位:件/10年で約4倍、コロナ禍以降に急加速
A+B出典: 中小企業庁「中小M&A実績調査」/上場M&A仲介3社IR
上場M&A仲介3社の取扱件数推移
単位:件/日本M&Aセンター・ストライク・M&Aキャピタルパートナーズ合算
B出典: 日本M&Aセンター/ストライク/M&Aキャピタルパートナーズ IR
業種別 中小M&A シェア構成(2024)
単位:%/会計事務所は約2%(業界規模に対しては高活発度)
A+B出典: 中小企業庁/業界専門メディア集約
KEY FINDING
10年で約4倍、コロナ禍以降に急加速
中小M&A成約件数は 10年で約4倍に拡大。コロナ禍の2020-2022年に急加速、2024年には年間 約4,200件に到達した。会計事務所M&Aは全体に占めるシェアは 約2%だが、業界規模に比して成約活発な領域として位置づけられる。
02
INFRASTRUCTURE GROWTHM&A支援機関の整備
M&Aを支える支援インフラはどう拡大したか?
M&A支援機関 登録数の推移(2017-2024)
単位:機関数/7年で約7倍に急増
A出典: 中小企業庁「M&A支援機関登録制度」
事業承継・引継ぎ支援センター 相談件数
単位:万件/6年で約3倍に拡大
A出典: 中小企業基盤整備機構「事業承継・引継ぎ支援センター 実績」
同センター 成約件数の推移
単位:件/6年で約4倍に拡大
A出典: 中小企業基盤整備機構 同上 成約実績
KEY FINDING
マッチング基盤は確実に整った
M&A支援機関は7年で 約7倍に急増、事業承継・引継ぎ支援センターの相談件数も 約3倍、成約件数も 約4倍に拡大。「相談する場所がない」「仲介がいない」という時代の問題は解消され、売り手・買い手のマッチング基盤は確実に整った
03
INDUSTRY SECTORS業種別 M&A件数の構成
業種別に見ると、M&A件数のシェアはどうなっているか?
業種別 M&A成約件数(2024)
単位:件/製造・サービス・卸売小売がボリュームゾーン
A+B出典: 中小企業庁/業界専門メディア集約
業種別 M&Aシェアの推移(2014→2024)
単位:%/サービス・IT・会計事務所が伸長
A+B出典: 中小企業庁/業界専門メディア集約 経年比較
会計事務所M&Aの伸び率(2014→2024)
単位:件/10年で約3倍に拡大
B出典: 業界専門メディア集約/上場仲介社IR
KEY FINDING
サービス・IT・会計事務所が伸びている
業種別シェアは サービス業・IT・会計事務所が伸びている。会計事務所M&Aも 10年で約3倍に拡大。業界規模が約3万事業所と小さいながら、件数の伸び率は中小M&A全体と同等のペース。
04
DEAL SIZE規模別 成約件数
規模別に見ると、どんな会計事務所がM&A対象になっているか?
売上規模別 会計事務所M&A 件数構成(2024)
単位:%/5,000万-1億円層がボリュームゾーン
B出典: 業界専門メディア集約(船井総研/日本M&Aセンター コラム等)
職員数別 成約案件の構成
単位:%/1-9人の小規模事務所が80%
B出典: 業界専門メディア集約
規模別 成約率(売り手登録に対する成約率)
単位:%/規模が大きいほど成約率が高い
B出典: 業界専門メディア集約
KEY FINDING
5,000万-1億円層がボリュームゾーン
売上5,000万円〜1億円層がM&A成約のボリュームゾーン(約35%)。職員数では1-9人の小規模事務所が全体の 80%を占める。規模が大きいほど成約率は高い(3億超で約75% vs 5,000万未満で約45%)── 大型案件は買い手が積極的、小規模案件は買い手探しに時間がかかる構造。
05
BUYER TYPE買い手タイプ別シェア
会計事務所を買っているのは誰か?
買い手タイプ別 シェア(会計事務所M&A)
単位:%/税理士法人(大手+中堅)が約65%
B出典: 業界専門メディア集約
大手税理士法人の買収件数推移(推計)
単位:件/10年で約2.5倍に拡大
B出典: 各法人公式法人案内・拠点拡大事例/業界専門メディア集約
異業種参入(金融・コンサル・IT等)の買い手数
単位:社/10年で約3倍に拡大
B出典: 業界専門メディア集約
KEY FINDING
買い手の3分の2が税理士法人、異業種参入も急増
買い手の 約65%が税理士法人(大手+中堅)。大手税理士法人の買収件数は10年で約2.5倍に拡大、業界の集約・大型化を牽引している。異業種参入(金融・コンサル・IT)も増加しており、買い手の多様化が進んでいる。
06
PRICE TREND譲渡価格レンジの推移
譲渡価格相場はこの10年でどう動いたか?
売上倍率レンジの中央値の推移(2014→2024)
単位:倍/0.7→0.85へ緩やかに上昇
B出典: 業界専門メディア集約(ZEIKEN/船井総研/日本M&Aセンター コラム等)
譲渡額レンジの分布(2024)
単位:%/1,000-3,000万円が最多35%
B出典: ZEIKEN「税理士事務所M&Aの譲渡対価の相場」
営業利益倍率(年分)の中央値
単位:年分/3年→4.5年に拡大
B出典: 業界専門メディア集約
WARNING
売り手有利の市場に近づいている
譲渡価格相場は 緩やかに上昇。売上倍率は10年で 0.7倍 → 0.85倍へ上昇、営業利益倍率も 3年分 → 4.5年分へ拡大。買い手間の競争が激化し、売り手有利の市場に近づいている。今動く売り手は10年前より好条件で売却できる可能性が高い
07
TIME-TO-CLOSE成約までの期間と成約率
M&A交渉から成約までどれくらいかかるか?
成約までの平均期間の推移(2014-2024)
単位:ヶ月/10年で約半減(24→12ヶ月)
B出典: 業界専門メディア集約/日本M&Aセンター コラム
売り手登録 vs 成約 件数の年次比較
単位:件/成約率が年々向上
A出典: 中小企業基盤整備機構「事業承継・引継ぎ支援センター 実績」
規模別 成約までの平均期間
単位:ヶ月/規模が大きいほど早い
B出典: 業界専門メディア集約
KEY FINDING
成約期間は10年で半減、売り手は早めの準備が有利
成約までの平均期間は 10年で半減(24ヶ月 → 12ヶ月)。買い手・支援機関の整備で マッチングが速くなった。一方、規模が小さい案件ほど時間がかかる傾向は残っており、売り手は早めの準備が有利
08
OUTLOOK10年後の市場予測
このトレンドのまま進むと、10年後の会計事務所M&A市場はどうなるか?
中小M&A成約件数の単純予測(2024→2030)
単位:件/2030年に約6,500件、市場形成期から成熟期へ
A出典: 中小企業庁 経年データ+直線で延ばした単純予測
会計事務所M&Aの予測件数
単位:件/2030年に約220件
B出典: 業界専門メディア集約+単純予測
M&A仲介社の市場規模予測(売上ベース)
単位:億円/2030年に約1,000億円
B出典: 上場M&A仲介3社IR+業界推計
WARNING
市場形成期から成熟期へ、競争激化の時代
中小M&A成約件数は 2030年に約6,500件まで拡大する単純予測。会計事務所M&Aも比例して 2030年に約220件まで増加。市場形成期(2014-2024年の4倍化)から成熟期に向かう過渡期にある。売り手にとっては「動きやすい時代」、買い手にとっては「競争激化の時代」が確定しつつある。

結論:「4,000件・3,500機関・約100件」が示す会計事務所M&A市場の形成プロセス

日本の中小M&A市場はこの10年で大きく形成された。中小企業庁の「中小M&A実績調査」によれば、成約件数は2014年の 約1,000件から、2024年には 約4,200件へと 約4倍に拡大した。コロナ禍の2020-2022年に急加速で伸び、上場M&A仲介3社(日本M&Aセンター・ストライク・M&Aキャピタルパートナーズ)の合算取扱件数も2014年の約400件から2024年の 約1,500件に増えている。中小企業庁のM&A支援機関登録制度には 約3,500機関が登録され、事業承継・引継ぎ支援センターの相談件数も 23万件に達した。「相談する場所がない・仲介がいない」という構造的問題はもはや解消されており、マッチング基盤は確実に整った

会計事務所M&Aは中小M&A全体の 約2%(年間 約100件・業界推計)にとどまるが、伸び率は全体と同等のペース。10年で約3倍に拡大し、市場形成期に入っている。買い手構成は 約65%が税理士法人(大手40%+中堅25%)で、業界の集約・大型化を牽引する。辻・本郷税理士法人は10年で買収案件を約2.5倍に増やし、全国84拠点まで拡大した。同時に、金融・コンサル・ITなどの 異業種参入も10年で約3倍に増えており、買い手の多様化が進む。売り手側は売上規模 5,000万円〜1億円層がボリュームゾーン(成約案件の約35%)、職員数では 1-9人の小規模事務所が全体の 80%を占める。

譲渡価格は緩やかに上昇している。売上倍率の中央値は2014年の 0.7倍から2024年の 0.85倍へ、営業利益倍率も 3年分 → 4.5年分に拡大した(業界専門メディア複数の中央値ベース)。買い手間の競争が激化し、売り手有利の市場に近づいている。譲渡額レンジでは1,000万円〜3,000万円が最多(35%)、5,000万円〜1億円層も20%を占める。一方、成約までの平均期間は10年で半減(24ヶ月 → 12ヶ月)── 買い手・支援機関の整備でマッチングが速くなった。ただし規模が小さい案件ほど時間がかかる傾向は残っており、売り手は数年前から「引き継げる事務所」へ磨き込む準備が有利

中小企業庁のM&A実績データを直線で延ばすと、2030年の成約件数は 約6,500件、会計事務所M&Aも 約220件まで拡大する単純予測。市場規模も 約1,000億円(M&A仲介社の売上ベース)に達する見込み。これは個別事務所の問題ではなく、業界全体の構造として既に確定した方向性である。売り手にとっては「動きやすい時代」、買い手にとっては「競争激化の時代」が確定しつつある。本記事はあくまで業界全体の市場マップを俯瞰したものだが、ここから先の問いは個別である。あなたの事務所の売上規模、職員数、所長年齢、地域──市場平均と並べたとき、自分の位置はどこにあるのか。次の記事では「譲渡価格レンジの分布(#006)」で価格相場をさらに深掘りし、「買い手タイプ別シェア分析(#007)」で買い手の多様化を扱う。

REFERENCES

出典・参考文献

本記事に掲載したすべての数値・グラフは、(A) 公的統計(B) 上場M&A仲介社IR・業界専門メディアのみを根拠としている。本記事の主軸データは 中小企業庁のM&A実績調査上場M&A仲介3社のIR
A
公的統計・公表資料
  • 中小企業庁「中小M&A実績調査」「中小企業の経営資源集約化等に関する検討会」 公式ページ ── KPIバンド①, c01a, c03a-b, c08a で参照(本記事の主軸データ)
  • 中小企業庁「M&A支援機関登録制度」 公式ページ ── KPIバンド③, c02a で参照
  • 中小企業基盤整備機構「事業承継・引継ぎ支援センター」実績データ 公式ページ ── c02b, c02c, c07b で参照
B
上場M&A仲介社IR・業界専門メディア
  • 日本M&Aセンター IR資料 IRページ ── KPIバンド②, c01b, c03c, c05b, c08c で参照(業界最大手仲介社)
  • ストライク IR資料 IRページ ── c01b, c08c で参照
  • M&Aキャピタルパートナーズ IR資料 IRページ ── c01b, c08c で参照
  • 税務研究会 ZEIKEN「税理士事務所M&Aの譲渡対価の相場」 記事ページ ── c06a-c で参照
  • 船井総研グループ M&A・事業承継コンサル「士業M&A 動向レポート」 コラム ── c04a-c, c05a, c06a-c, c07a, c07c で参照
  • 会計事務所名鑑「税理士M&A業界レポート」 会計事務所名鑑 トップ ── c03c, c05a-c で参照
  • 辻・本郷税理士法人 公式法人案内 法人案内 ── c05b で参照(大手の買収事例)
  • 業界専門メディア集約:みつきコンサルティング/HUPRO MAGAZINE等 みつきコンサルティング ── c04a-c, c05c, c07a-c で参照
本記事では (C) 自社調査・自社推計を使用していません。
すべてのチャートは公的統計(中小企業庁/中小機構/支援機関登録制度)と上場M&A仲介社のIR資料・業界専門メディアのみを根拠としています。読者が出典URLから同じ数字に到達できることを編集方針としています。
最終確認日:2026年5月 | 次回改訂予定:2026年10月(以後、半年ごとに4月/10月改訂)