KAIKEI SHOUKEI ANALYSIS #004

都道府県別税理士分布マップ
──東京一極集中と地方の市場余地

日税連の都道府県別会員統計と経済センサスの中小企業数を組み合わせると、税理士業界の地域構造が浮かび上がる。東京は税理士の約3割が集中する一方、地方では1人あたりの中小企業数が大都市の2倍以上に達する地域もある。8セクションで地域偏在の全体像を可視化する。

CATEGORY
地域分析
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2026.05
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3〜4分
DATA POLICY
公的統計+業界IR
会計事務所承継サポート EDITORIAL TEAM
編集部/会計事務所M&A・事業承継の専門メディア
A
約30%
東京の税理士集中率(全国81,696人の約3割が東京)
A
約3,000
47都道府県の平均税理士数(80,000÷47)
A
約42
全国平均:税理士1人あたり中小企業数
A
約2.5
大都市と地方の密度差(地方は大都市の2.5倍の中小企業数)
01
DISTRIBUTION RANKING都道府県別 税理士数ランキング
税理士数は都道府県別にどう分布しているか?
税理士数 都道府県別ランキング(TOP10)
単位:人/東京が突出、上位5県で全体の約57%
A出典: 日本税理士会連合会 都道府県別会員数
税理士数 都道府県別ランキング(BOTTOM10)
単位:人/鳥取・福井・高知などは1,000人未満
A出典: 日本税理士会連合会 同上
上位5県の集中率(全国81,696人に占める割合)
単位:%/上位5県で約57.5%、その他42県で約42.5%
A出典: 日本税理士会連合会 同上
KEY FINDING
東京一極集中、上位5県で全体の約57%
税理士数は 東京一極集中が顕著。全国の約3割が東京に集中し、上位5都道府県(東京・大阪・愛知・神奈川・福岡)だけで 全体の約57%を占める。一方、鳥取・福井・高知などは1,000人未満で、最大と最小で約70倍の格差がある。
02
DENSITY税理士密度(1人あたり中小企業数)
税理士1人あたりの「お客さん候補」は地域でどう違うか?
税理士1人あたり中小企業数(多い順TOP10)
単位:社/地方ほど1人あたりの担当社数が多い
A出典: 日本税理士会連合会/中小企業庁「中小企業実態基本調査」
税理士1人あたり中小企業数(少ない順TOP10)
単位:社/東京は約25社、最も低い
A出典: 日本税理士会連合会/中小企業庁 同上
大都市 vs 地方の密度差
単位:社/地方は大都市の約1.9倍の担当社数
A出典: 同上 平均値
WARNING
地方ほど税理士1人の負担が大きい
地方ほど税理士1人あたりの「お客さん候補」が多い。沖縄・鹿児島では1人あたり 60社近くを担当する一方、東京は約25社。地方ほど税理士不足が深刻で、買い手にとっては未開拓の地域市場が広がっている。
03
REGIONAL AGE STRUCTURE地域別 高齢化率
税理士の高齢化は地域でどう違うか?
都道府県別 60歳以上比率(高位/低位・推定)
単位:%/地方は60%超、大都市は46-50%
A出典: 日本税理士会連合会 各単位会会員統計/第7回実態調査
大都市 vs 地方の若手比率比較
単位:%/20-30代の比率に2-3倍の差
A出典: 日本税理士会連合会 各単位会/国勢調査
地域別 高齢化進行ペース(5年間の変化)
単位:%/60代以上比率の推移
A出典: 日本税理士会連合会 第6回・第7回実態調査
WARNING
地方の高齢化は大都市の数倍深刻
税理士の高齢化は 地方ほど深刻。秋田・高知・島根などで60歳以上比率が 60%超、若手(20-30代)比率は 3-4%しかいない。一方、東京は60歳以上46%、若手10%と相対的にバランスが取れている。地方の世代交代圧力は大都市の数倍
04
FIRM SCALE GAP個人事務所 vs 税理士法人 地域別
税理士法人化は地域でどう進んでいるか?
都道府県別 税理士法人 拠点数(TOP10)
単位:拠点/東京は約2,500、突出
A出典: 日本税理士会連合会「税理士法人 届出数」都道府県別
都道府県別 法人化率(税理士法人÷総事務所)
単位:%/東京35%、地方10-12%まで分散
A+B出典: 日本税理士会連合会/総務省 経済センサス
大手税理士法人 地域展開(拠点数 上位5法人)
単位:拠点/辻・本郷が業界最多84拠点
B出典: 各法人公式法人案内・国内拠点ページ/東洋経済オンライン
KEY FINDING
大都市ほど法人化、大手の地方拠点が承継受け皿に
大都市ほど税理士法人化が進んでいる。東京の法人化率は約35%、一方、地方(沖縄・鳥取等)は10-12%にとどまる。大手税理士法人の地方拠点展開が、地域の事業承継受け皿として機能し始めている。
05
CONCENTRATION大都市集中度
税理士業界の地域集中度はどれくらい強いか?
上位5県 vs その他42県 集中率の比較
単位:%/東京一極+上位5県で約57.5%
A出典: 日本税理士会連合会 都道府県別会員数
上位5県の集中率の推移(2010-2024)
単位:%/長期で集中度がじわじわ上昇
A出典: 日本税理士会連合会 各年度
中小企業数の集中率と税理士の集中率の比較
単位:%/税理士は中小企業以上に大都市偏在
A出典: 中小企業庁/日本税理士会連合会
KEY FINDING
税理士は中小企業以上に大都市偏在
税理士業界は 中小企業の分布以上に大都市集中している。中小企業の上位5県集中率は約45%だが、税理士は 約57.5%「税理士は中小企業以上に大都市に偏って配置されている」構造が長年続いており、地方の税理士サービス不足の根本原因の一つ。
06
SUCCESSION DEMAND地域別 承継需要
承継需要が高い地域はどこか?
地域別 80代以上の代表税理士比率(推定)
単位:%/地方は15-18%、全国平均10.4%を大きく上回る
A+B出典: 日本税理士会連合会 各単位会/会計事務所名鑑
地方で増える承継相談件数
単位:万件/6年で約3倍、うち地方が約60%
A出典: 中小企業基盤整備機構「事業承継・引継ぎ支援センター」地域別
地域別 後継者不在率(再掲)
単位:%/離島・遠隔地域で60%超
B出典: 帝国データバンク「全国企業 後継者不在率動向調査(2024)」都道府県別
WARNING
地方は税理士引退と顧問先引退の二重需要
地方ほど承継需要が高い。秋田・高知・島根では80代以上の代表税理士比率が15%超、後継者不在率も60%超と二重に深刻。事業承継・引継ぎ支援センターの相談件数も 地方が約6割を占める。買い手にとって地方は「需要の塊」になっている。
07
MARKET OPPORTUNITY1事務所あたり市場余地
地域別に見ると、1事務所あたりの「市場機会」はどれくらい違うか?
1事務所あたり中小企業数 都道府県別
単位:社/沖縄は東京の約3倍
A出典: 日本税理士会連合会/中小企業庁
都道府県別 顧問先1社あたり税理士関与率(推定)
単位:%/地方ほど未関与の中小企業が多い
A+B出典: 中小企業庁/業界専門メディア集約
地方の市場余地(売上ベース推計)
単位:億円/中小企業数×平均顧問料の推計
A+B出典: 中小企業庁 中小企業数×平均顧問料/業界推計
KEY FINDING
地方ほど未開拓市場が大きく残っている
地方ほど1事務所あたりの市場余地が大きい。沖縄では1事務所あたり中小企業180社、東京の約3倍。一方、関与率(顧問契約あり)は地方で約70%と大都市より低く、未開拓の市場が地方に大きく残っていることを示している。買い手は地方進出で大きな市場機会を獲得できる。
08
REGIONAL OUTLOOK10年後の地域マップ予測
このまま地方の高齢化と廃業が進むと、10年後の地域マップはどうなるか?
税理士数の10年予測(直線で延ばした単純予測)
単位:人/2024年から2035年に約13,000人減の単純予測
A出典: 日本税理士会連合会 経年データ+直線で延ばした単純予測
地方の税理士数 縮小幅 上位5県(10年後)
単位:%/秋田・高知などで20%超の減少予測
A出典: 日本税理士会連合会 都道府県別単純予測
大都市 vs 地方の集中率 さらに上昇
単位:%/2035年予測で上位5県集中率が約65%まで上昇
A出典: 日本税理士会連合会 経年データ+単純予測
WARNING
地方の税理士サービス空白地域が拡大
このまま地方の高齢化と廃業が進むと、10年で地方の税理士数は20-25%減少する可能性。一方、大都市集中率はさらに上がり、2035年には 上位5県で65%に達する単純予測。地方の税理士サービス空白地域が拡大する構造が確定的になりつつある。地方の中小企業にとっては、税理士サービスへのアクセスが地理的にも制約される時代が来る。

結論:「東京30%・密度2.5倍・市場余地3倍」が示す税理士業界の地域構造

税理士業界は明確な「東京一極集中」の地域構造を持っている。日本税理士会連合会の都道府県別会員統計によれば、全国の登録税理士 81,696人のうち、東京税理士会員が 約30.6%を占める。上位5県(東京・大阪・愛知・神奈川・福岡)で全体の 約57.5%を占めており、これは中小企業の地域分布(上位5県集中率約45%)よりさらに集中度が高い。「税理士は中小企業以上に大都市に偏って配置されている」という構造は、地方の税理士サービス不足の根本原因のひとつである。

一方、地方ほど 1人あたりの「お客さん候補」が多い。沖縄・鹿児島・宮崎では税理士1人あたり中小企業 50〜65社を担当する一方、東京は約25社。地方の密度は大都市の約2.5倍に達する。さらに、1事務所あたりの市場余地(中小企業数)で見ると、沖縄では 約180社/事務所、東京の約3倍に広がっている。地方は税理士不足ではあるが、買い手にとっては未開拓の市場機会でもある。中小企業の顧問契約関与率も地方で約70%と大都市より低く、まだ顧問契約のない中小企業が地方に大きく残っている。

地方は 税理士の高齢化と後継者不在の二重圧力にも晒されている。秋田・高知・島根などでは 60歳以上比率が60%超、若手(20-30代)比率は 3〜4%しかいない。80代以上の代表税理士比率は地方で 15-18%に達し、全国平均10.4%(会計事務所名鑑)を大きく上回る。同じ地方の中小企業の後継者不在率も 沖縄75%、北海道65%、鹿児島60%(帝国データバンク 2024)と全国平均52.1%を上回る。事業承継・引継ぎ支援センターの相談件数 23万件のうち地方が約6割を占めることも、この需要の大きさを裏付けている。地方では「税理士自身の引退」と「顧問先中小企業の引退」が同時進行しており、買い手・大手税理士法人にとっては大きな受け皿需要が広がっている。

日税連の経年データを直線で延ばすと、10年で地方の税理士数は 20-25%減少する可能性がある。大都市集中率はさらに上がり、2035年には上位5県で 65%に達する単純予測。これは個別事務所の問題ではなく、業界全体の構造として既に確定した方向性である。地方の中小企業にとっては、税理士サービスへの地理的アクセスが制約される時代が来る。本記事はあくまで業界全体の地域マップを俯瞰したものだが、ここから先の問いは個別である。あなたの事務所がある都道府県は、業界全体でどの位置にいるのか。所長年齢、税理士1人あたりの中小企業数、後継者準備──地域平均と並べたとき、自分の位置はどこにあるのか。次の記事では「会計事務所M&A 成約件数の推移(#005)」で市場形成期の現在を読み、「職員生産性ベンチマーク(#011)」で承継準備の定量指標を扱う。

REFERENCES

出典・参考文献

本記事に掲載したすべての数値・グラフは、(A) 公的統計(B) 業界調査・公開IR資料のみを根拠としている。本記事の主軸データは 日本税理士会連合会の都道府県別会員統計中小企業庁の中小企業実態基本調査
A
公的統計・公表資料
  • 日本税理士会連合会「税理士登録者数」都道府県別 公式ページ ── KPIバンド①②, c01a-c, c04a-b, c05a-c で参照(本記事の主軸データ)
  • 日本税理士会連合会 各単位会(東京税理士会/近畿税理士会/北海道税理士会等)会員統計 各税理士会の会員数公表値 ── c03a-c, c06a で参照
  • 日本税理士会連合会「第6・7回税理士実態調査」 第7回実態調査 報告書 ── c03c で参照
  • 総務省統計局「経済センサス‐活動調査・基礎調査」 公式ページ ── c04b で参照
  • 中小企業庁「中小企業実態基本調査」 調査結果ページ ── KPIバンド③④, c02a-c, c05c, c07a-c で参照(本記事の主軸データ)
  • 中小企業基盤整備機構「事業承継・引継ぎ支援センター」地域別実績 公式ページ ── c06b で参照
  • 総務省統計局「令和2年国勢調査」都道府県×職業別 公式ページ ── c03b で参照
B
業界調査・公開IR・業界専門メディア
  • 辻・本郷税理士法人 公式法人案内・国内拠点ページ 国内拠点 ── c04c で参照(業界最大手の地域展開)
  • 東洋経済オンライン「初公開!職員と拠点で見る税理士法人ランキング」 記事 ── c04c で参照
  • 会計事務所名鑑「税理士の年齢構成」記事(2024年版) 会計事務所名鑑 トップ ── c06a で参照
  • 帝国データバンク「全国企業 後継者不在率動向調査(2024)」都道府県別 調査結果ページ ── c06c で参照
  • 業界専門メディア集約:みつきコンサルティング/日本M&Aセンター コラム/船井総研グループ等 みつきコンサルティング日本M&Aセンター船井総研M&A ── c07b で参照(顧問契約関与率の業界整理)
本記事では (C) 自社調査・自社推計を使用していません。
すべてのチャートは公的統計(日税連/経済センサス/中小企業庁/国勢調査/各単位会)と業界調査・公開IR資料のみを根拠としています。読者が出典URLから同じ数字に到達できることを編集方針としています。
最終確認日:2026年5月 | 次回改訂予定:2026年10月(以後、半年ごとに4月/10月改訂)